降る雨を窓越しに眺めていたマジシャンの少年が何かで頭を小突かれて振り向くと、本を手にした青髪のプリーストが傍らに立っていた。
「眺めていても雨は止まんぞ?ついでに課題も終わるまい」
言うだけ言うと振り向いたマジシャンに構いもせず、既に興味はないのか椅子に戻り本を繰り直す。
「そんなもの言われずとも承知してますよ」
ふん、と小さく息を吐きやる気なさげに机の上に広げられた書物に視線を戻した。こつこつと指で机の上を弾きながら読み進める。
「…雨は嫌いか?」
少しの間を置いて、プリーストがそう口を開いた。唐突な問いに怪訝そうにマジシャンが見返すが、気にも止めていないようで相変わらず視線は手元の本に注がれている。
とはいえその様は読んでいるというほど真剣でもなく、どちらかと言えば眺めているようだった。
「何やら恨めしそうに見ていたが」
変わらぬ口調と態度のままプリーストが付け加える。見てないようでいてしっかりと人の様子を見ているのはいつものことだ。つくづく人が悪いとマジシャンが内心で呟く。
「先生と会った時も雨でしたよ」
「そうだったかな」
それきりまたどちらも黙り混む。
プリーストが頁を繰る音だけが、静かに室内に響いていた。
「…神は何を見てるんだとの問いに、神は何も裁かないと答えたのは貴方だけだ」
やや暫く沈黙してから、マジシャンが沈黙を破る。
「そんなことを聖職者の口から聞けるとは思いませんでした。あの時から俺は貴方を目標に据えたんです」
また随分とけったいな目標だなと、本を眺めつつプリーストが応えた。
「師事するなら異端の聖職者よりウィザードかセージのほうがよかろうに」
物好きな…と続けて呆れに気味に呟く口調はわざとらしい。
「技術はありますから」
伊達に魔法士の家系ではありませんと口にし、マジシャンが本を閉ざす。席を立つ少年に、さも課題はどうしたと言いたげにプリーストが視線を向けた。
「茶を淹れます。休憩しましょう」
言うと棚から箱を持ち出し、部屋をあとにする。戻ってくる頃には雨も小降りになっていた。
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