■短話・記憶ノ欠片 [ ウィザードとポポリンの旅 ]


   首都の北に鬱蒼とした森がある。青くて大きい兎、若しくはルナティックの親玉というべきエクリプスの出る森だ。そこをポポリンを連れた男ウィザードは一人のんびりと歩いていた。
   時折草むらからマンドラゴラが、彼らにとっては手ともいうべき触手を伸ばしてくるがまず捕まることがない。
   マジシャン時代はそれでも苦労したものだとふと思い出す。
   気を取られたか、その途端に足下に1本絡みついた。別に振りほどいても良かったのだがそれも何だか面倒で威力を絞ったファイアーボルトを振り返り様に放って焼き払う。
   何となくエクリプスの情報を確認してみたくなって更に北のアルデバランから歩いてきたというのに、早数時間が経過していた。挙げ句、どうにも出くわしそうにない。
   「マジ時代はよく会ったのになぁ…」
   木陰に腰を下ろしてぽつりと呟く。会わなくていいときにはよく出てくるくせに、いざ探すと見つからない。よくある事と言えばそうなのだが愚痴の一つくらい出るというものだ。
   師とも言うべきプリーストによく「おまえは運が悪い」などと言われるがこれもそのうちだろうかと心底溜息をついた。
   「きっと良いことがあるリン」
   傍らにぽよぽよと跳ねながら寄ってきたポポリンが膝の上に着地しようとしつつそんなことを言う。ひょいと膝をずらしてすかしてやると勢い余って木の幹に激突した。そのままころころと2回転ほどして起きあがる。
   そのまま新しい遊びを見つけたらしい。今度は木の幹に自ら飛びかかり弾んで戻る。その繰り返し。
   「この脳天気…」
   やれやれとため息混じりに呟くも、眺めていると自然と頬が緩んでいた。


▼07 [ 神の威を刈る ]
▼05 [ 微笑みと死の宣告 ]



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